リンパ腫の治療経過中に半球性に巨大病変を形成した進行性多巣性白質脳症(PML)の1例がReports — Clinical Practice and Surgical Cases(IF=0.6)に掲載されました。
PMLは、免疫力が低下した状態(日和見感染症など)において、体内に潜伏していたJCウイルスが脳内で再活性化し、脳の白質を破壊する予後不良の希少疾患です。一般的には脳内に複数の小さな病変が散発的に現れるのが特徴ですが、本症例では「片側の脳半球にまたがる巨大な単一病変」を形成するという、極めて稀な提示(臨床像)を示しました。
本症例は悪性リンパ腫の治療経過中に脳病変が出現したため、当初はリンパ腫の「中枢神経再発」との鑑別が極めて困難でした。しかし綿密な画像評価と脳脊髄液解析によるJCウイルスDNAの検出によりPMLと確定診断しました。
今回の症例の意義として、診断のピットフォール(盲点)への警鐘があります。悪性リンパ腫などの血液腫瘍の経過中に脳内病変が現れた場合、第一に再発や転移が疑われます。しかし、本報告は「一見、悪性腫瘍のように見える巨大病変であっても、PMLのような致死的な感染症の可能性がある」という重要な教訓を示しています。また、PMLは進行が非常に早く、診断の遅れが致命傷となります。
本症例のように、非典型的な画像所見(片側半球の巨大病変)であってもPMLを鑑別上位に挙げ、早期に脳脊髄液検査(PCR検査)を行うことが、生命予後および機能予後に直結することを再確認させました。

